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すべてはスライドショーから始まった


 さて、大晦日。

 フォトジャーナリズムの世界で、海外ではマルチメディアの新しい表現形式がどんどん現れているのに、日本はその動きが鈍いことに焦燥感を持ちながら、いろいろな事例を紹介しようと始めたのが本ブログだった。

 さまざまなコンテンツをピックアップしてきたけれど、海外、特に英語圏でマルチメディア化の動きが大きく加速した背景には一本のソフトウェアがある。その名をSoundslidesという。

Soundslides: Software for Storytelling

 これが世に出たのは2005年。作ったのはフォトジャーナリストのジョー・ワイス(Joe Weiss)氏。

 そのきっかけは、彼が2002年に参加したフォトジャーナリズムのワークショップにスタッフとして参加した際、参加者のスライドショーを50編も作らなければいけなくなり、何とかこれを簡単にしたいと思ったのがきっかけだという。

 そしてできたのがこのソフトだ。

 これが紹介されてからというもの、全米の新聞社にまたたく間に広がり、世はスライドショーブームとなったのである。簡単にスライドーショーを作りたかったという通り、また、そのSoundslidesという名前が示す通り、サウンド付の静止画スライドショーを作るのが、このソフトを使うとものすごく簡単になるのである。

 用意するものは、適当なオーディオファイル(インタビューでも音楽でも、なんでも)と、JPEGの写真。

手順は、サウンドをまず2分〜5分くらいの、コンテンツに合わせた長さで用意する。

あとは長さに合わせて写真を何枚か用意する。このソフトに両方を入れ込むと、あとは勝手に計算してスライドショーを作ってくれる、という訳だ。

 この操作、実に簡単で、慣れればおそらく1時間もかからずにスライドショーができあがる。

 インターフェイスも直感的だが、プレーボタンを押すと音楽付き自動再生が始まるが、以下の操作をすると再生が止まる。「田」型のアイコンを押すと写真の一覧が見れる。左右の矢印は一枚ずつ写真を送り、四方向に向いた矢印を押すとフルスクリーンモードになる。「hide caption」を押すと、写真の説明が隠れる。

このソフトを作ったのがフォトグラファーだというのもいい。不便だと思ったら自分で作ってしまう、その精神がアメリカ的で私は好きである。(※思えば、カメラバッグの老舗DOMKEも、作ったのはフォトジャーナリストのJim Domkeで彼はまだ現役のフォトグラファーでもある。)

 Joe Weiss氏がなぜこれを作ったかについては、Poynter Instituteのインタビュー記事が詳しい (January 9, 2007)。

 もうひとつ、重要な要素はキャプションおよび、写真にくっついてくるテキストデータの取り込みである。実は海外の報道機関のほとんどは写真のテキストデータの入れ込みに、IPTC(International Press Telecommunications Council)の定めたフォーマットを使っていて、これは実はPhotoshop等のメジャーな画像処理ソフトウェアには標準装備されている。Photoshopだと「ファイル情報」のメニューから出てくるのがこれである。

 報道機関が撮影する写真は、このデータを入力した上で保存され、あるいは世界に流通するので、メールで送ろうがどうしようが、常にこのテキストデータがついて回り、たいへん便利である。ほぼすべての写真にこのデータがあると思っていい。

 そして、Soundslidesがいいのは、このキャプションの部分を自動的に吸い取って、スライドショーに表示してくれるのである。フォトグラファーにしてみれば、こんな楽なことはない。

(※しかし残念ながら、事前にIPTCフィールドに日本語を入れ込んだデータを読み込ませると、なぜかSoundslidesが途中でハングした。このことについて、Soundslides社に問い合わせて、こっちから日本語を入れ込んだ写真ファイルを送ってテストしてもらったのだが、「え?表示されるけど?」ということで、あちらでは問題なく動いたそうだ。??ひょっとすると日本語版MacOSのせい??ということで、この点については原因不明のまま今日に到る。知ってる人がいたら教えて下さい。)

 という訳で、日本で流行ってもよさそうなものだが、これがさっぽり。なぜかというと、日本の報道機関のほとんどはIPTCのフォーマットを使っていないのである!その代わり、デジタルでの写真流通が本格化したときに、日本では、NSK(日本新聞協会)フォーマットという独自フォーマット(!あ〜ぁ・・・)を作ってしまい、これがデフォールトになってしまった。ただし、海外との写真やりとりが多い共同通信社などは、IPTCに準拠したものを使っていたこともあったらしい。(※かつては、PhotoshopのプラグインでNSKフォーマットを扱うものがあったのだが、今はどうなっているのだろう。この点、今どうなっているのか、現場を離れてしまって不明。現在の日本のニュース写真の情報、知っている方がいらっしゃいましったらこちらもぜひ教えてください)

 時は流れ、このスライドショーの写真のいくつかは、だんだん動画になっていき、スティルと動画のミックス、あるいは動画オンリー、というふうにニュースメディアのサイトは変化しながら進んでいるのである。

 動画オンリーとなってくると、テレビとどう違うの?ということにもなるが、基本的に何も違わない。ウェブサイトでの発表形式で、そういう風に既存メディアの尺度を当てはめること自体が無意味なものになりつつある。

 ただし、その表現方法に「元のメディア」の「癖」みたいなものが反映されて、これまた斬新な表現方法が現れてくるのが面白いことは、本ブログで常に書いているところである。

 一本のソフトが業界の流れを変えてしまうこともある。フォトジャーナリズムについては、まさにこのソフトがこれだった。動画の出番が増えて、静止画スライドショーの出番はかつてほど多くはないかもしれないが、まだまだニュースサイトでは現役で活躍している。

 このソフトについては、いつか紹介したいと思っていたのだが、今年最後のしめくくりとして、感謝を込めて紹介させていただいた。Thank you, Joe!


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