キタラ 第一話 キタラには北海道の想いが詰まっている
Kitara is filled with Hokkaido Inspirations
(※以下の記事は2004年7月に札幌市の観光サイト「ようこそさっぽろ」に掲載されたものです)
札幌の中心部、ススキノの南側に広大な中島公園が広がる。この公園の西側に、札幌コンサートホールKitaraがある。街の真ん中にあるとは思えないほど、緑に囲まれた音楽ホールである。
Kitaraの名は、ギリシャ神話の音楽神アポロンの楽器「キターラ」と、「北」の意をかけた。
この街のオーケストラ、札幌交響楽団のプログラムを聴きにKitaraに出向く。今日の開演は午後7時。
6時30分の開場に合わせて、ぶらぶらと公園の中を歩いてKitaraへ。ホールへの道は、季節を問わず、これから聴く音楽への期待をゆっくりと高めてくれる。夏の宵の明るさ、秋の冷気、冬の雪、春の香り。公園入口から5分ほど歩くと、Kitaraのガラス張りのロビーからもれてくる明かりが見えてくる。人々がゆっくりと光の中に吸い込まれていく。併設のレストランで、公園を眺めながらコンサートの開始を待つ人もいる。
6時30分、Kitara大ホール。
ステージ上にはオーケストラの椅子が並べられ、30分後の開演を待つ。客席にぽつぽつと聴衆が入り始める。
6時45分、楽屋。
黒服の楽団員たちが、舞台のそでに集まり始める。それぞれの音合わせと練習の音が、次第にその厚みを増していく。歩き回りながら、楽譜を見ながら、思い思いに奏でられる音が重なり合い、舞台裏はもう音に満たされている。
6時55分、開演前のチャイムが鳴る。ロビーにたまっていた聴衆が、いそいそと客席へ向かう。楽屋の緊張も高まる。
すべての準備が整った。開演1分前。一瞬の静寂。
舞台へのドアが開く。楽団員たちがステージ上にすべり出る。拍手がホールを満たす。コンサートの幕があいた。
(写真・文:吉村卓也 初出:2004年「ようこそさっぽろ」)