

これは「やらせ」なのか
NPR (National Public Radio)が、ドキュメンタリー映画監督で、「The Thin Blue Line」や「Fog of War」の監督、エロル・モリス(Errol Morris)氏の本、「Believing is Seeing」(訳し方が難しいね)について紹介している。 Errol Morris Looks For Truth Outside Photographs この人、映画監督になる前は「写真探偵」と言われるほど写真に対する興味がおありで、歴史に残る写真に隠された「謎」についていろいろと調べるのが好きだったらしい。 番組の中でも取り上げられた本のテーマのひとつが「やらせ」の問題。 「実はあの写真はやらせだったんだよ」と暴露して終わるんじゃなくて、「やらせ(Staging)」とはいったい何なのか、と深い問いかけをしているのがいい。 たとえばクリミア戦争のロジャー・フェントン(Roger Fenton)の有名な写真。丸い大砲の球がゴロゴロしている大地の写真(1855年)なのだが、これがどうも球を集めてきて撮ったものらし


911とフォトグラファー 硫黄島写真との相似について
911のiconic(象徴的な)イメージというと、アメリカではこれだろう。 Ground Zero Spirit、などと呼ばれることもあるらしく、世界の多くの新聞、雑誌に紹介され、さらには切手にもなり、この写真に写った三人の消防士は一躍ヒーローとして扱われることになった。 この写真を初めてみたとき、ドキュメンタリー写真に多少とも興味のある人なら「あ、似てる!」と思ったに違いないのが、ジョー・ローゼンサール(Joe Rosenthal)の撮った硫黄島のアメリカ旗立て写真であろう。特にアメリカの人にとっては、このイメージは正真正銘iconic。まさに「アメリカ的なるもの」を象徴するように心に深く埋め込まれているはずだから、今回の消防士写真がまさにビンゴ!のように彼らの心の琴線に触れたのはほぼ間違いないだろう。 Photos by Thomas Franklin (top) and Joe Rosenthal この写真は、アメリカ・ニュージャージー州の新聞である「ザ・レコード(The Record)」氏のフォトグラファーである、トマス・フランクリン(T
ボケ考
最近はボケのある写真が流行である。 ボケといっても森山大道の「ブレ、ボケ」ではなくて、一点にピントが合ってあとはボケるという、被写界深度の思いっきり浅い写真のオンパレードと言っていい。アマチュアの間にもこの傾向は顕著で、いかにボケ味のいい写真を撮るかに労力が使われているようだ。人間はボケると疎まれるけど、写真のボケは大人気である。 そもそもいつからこんなにボケ始めたのだろう? 個人的な感想だが、10年くらい前から、このトレンドは始まっているように思う。 最初にボケ写真を見たのは、日本の雑誌の料理ページか何かだった。 初めて見たときはちょっと驚いて、「ピントが合ってないじゃないか!」と思ったのだ。 全然合ってない訳じゃないので、正確にいうと、「ピントが合ってないところがあるじゃないか!」なのだが、もっと専門的に言うと、「被写界深度が浅すぎるんじゃねえの!?もっと絞った方がいいんじゃない?」ということになる。 それまでは、料理や物撮りの写真は、写っている範囲にはそれなりにピントが合っているのが普通だったので、メインとなる料理の、それもその一点にしかは


BGM考
いつも愛読させてもらっているRaitankさんのブログに、ニュースフォトグラファーが東日本大震災の被災地の映像を撮影した映像が話題になっている、という記事があった。 (「大震災発生から今日までのアレコレ」 2011/3/23 raitank blog) このビデオです。 なぜ話題になっているかというと、これがあまりに情緒的であり、あまりに「美しい」からなのだ。そして、情緒的にしているのは、背景に流れている悲しいピアノのBGMによる。
話題になっている、と言ったが要するに、賛否両論なのである。これは何となくわかる。否の方は、こんな悲惨な状況なのに、こんなにきれいな「作品」にしてしまって、どういうつもりだ、ということ。賛の方は、状況が旨にしみた、これをみたうちの子どもは日本の子どもに何か送ろうと活動を始めた、といった具合。
ちなみに、このフォトグラファーはDan Chung氏。調べてみたらイギリスのガーディアン紙のスタッフで、この映像もガーディン紙のコンテンツの一部であるが、なぜかBGM付きは動画サイトのVimeoにアップされたもので、本